第5号議案
2013年度活動方針に関する件
3月11日の東北地方太平洋沖地震による東日本大震災と東電福島第一原発の事故は多くの人命を奪い、人々の生活基盤を崩壊させるとともに、生命・健康への重大な不安をもたらしています。多くの人々が被災者支援と被災地復旧の活動に参加する一方で、政府や自治体による被災者支援・被災地復興が遅々として進まない中、日本の政治と経済の混迷はますます国民の生活を困窮させてきています。民主党政権と野党自公両党は、震災復興を理由に、国立大学法人を含む公務員給与の大幅な引き下げを目論む一方、消費税増税や、子ども手当や高校授業料無償化廃止などが検討され、被災地域を除く地方交付税交付金の大幅な減額も予想されます。
大阪府の財政に直結する大阪府立大学の運営費交付金は、今年度から始まった第2期中期計画で90億円に削減するとされています。大阪府が設立団体としての責務を放棄した中期目標を掲げ、大学法人がそれに追従し、教職員と学生の意見を反映せずに策定した中期計画は、これまで以上に私たち教職員の勤務労働条件と大学の教育研究環境を悪化させると言わざるを得ません。府大教は教職員の勤務労働条件と大学の教育研究環境の改善を目指し、第2期中期計画の初年度に当たる2011年度の活動方針について、大会議案として以下に提案します。
重点課題と具体的取り組み
A) 給与改善についての取り組み
私たち教職員の勤務労働条件は、労働基準法第1条で「労働条件は、労働者は人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と定められた労働条件の原則に則り、第2条の「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」に拠って、決定されます。また、2008年3月に施行された労働契約法は第9条で
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定め、一方的な勤務労働条件の不利益変更を禁止するとともに、第10条で「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」と動務労働条件の不利益変更についての厳しい制限を定めています。労働者の保護を図る法の理念は、使用者が、賃金についての不利益変更を行う場合には、「代償措置その他関連する他の労働条件の改善」の措置を取ることを当然の前提としています。
給与については、地方独立行政法人法(地独法)第57条の3で、「法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならない。」と規定されています。すなわち給与の支給の基準は、「法人の財務状況と業務実績」および「社会一般情勢」であると明示し、大阪府が条例で府公務員に対して定める基準を、法人が画一的に法人教職員に適用することを強く戒めています。
法人は、これまで給与改定に際しては、「大阪府準拠」に拠ってきました。そのため、私たち教職員の給与は、社会一般情勢からみて、高等教育機関としては低く抑えられてきています。特に、教員の場合は、主要国立大学の平均に比べ、その低さは顕著となっています。大学の教職員としての尊厳の回復のためにも、府立大学の発展のためにも、給与の改善は火急の課題です。給与の改善は、私たち教職員の団結と運動にかかっています。労働法で保障された労使交渉に全組合員の団結で粘り強く取り組み、不利益変更を許さず、賃金切り下げ反対の取り組みをいつそう強化して、大学の崇高な社会的使命に相応しい「法人独自制度」を作らせる闘いを進めましょう。職員の給与改善には、府職労の闘いを支援し、府労組連と連帯して取り組みの強化を行つていきます。また、教員の給与改善には、国立大学の教職員組合の闘いと全大教の取り組みに連帯して、より一層の取り組みの強化を図ります。
A1 業務に見合った特殊勤務手当等の導入
2009年に法定職手当は特殊勤務手当として制度化され、充実されてきました。一方、社会貢献手当は表彰規程に基づく報奨金として支給されています。実際に汗をかいている教職員の業務に見合った特殊勤務手当の導入は、勤務労働条件の改善向上、組合員の権利拡大に向けて重要な課題です。特殊勤務手当等の導入については、今後も他の国公立大学の状況を調査し取り組みを進めていきます。
A2 裁判・労働委員会闘争
府大教は2008年度の活動方針に基づいて法人登記し、「法人格」を取得することにより、府大教が裁判所や労働委員会に提訴するための条件を整備しました。また、2006年4月に施行された労働審判法は使用者と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを、そのトラブルの実情に即し迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とする労働審判手続を定め、通常の裁判訴訟に比べて手続も容易で、短期間で紛争解決を図る手段として有効です。府大教は、北大、阪大において不当労働行為救済申し立てが地方労働委員会で認められたことやいくつかの私立大学の裁判闘争からの教訓に学び、これからも裁判・労働委員会闘争について研究、検討を進めていきます。
A3 勤務時間の短縮について
すべての職員を対象とした勤務時間の短縮を要求してきた府大教の運動の成果として、2010年4月より専任職員への勤務時間の短縮が導入され、2011年4月からは非専任職員(フルタイム契約職員)にも勤務時間の短縮が実施されました。しかしながら、2つの勤務体制
(A勤 9時~17時30分、B勤 9時15分~17時45分)により実施されている勤務時間制は、多くの職場で短縮の成果が十分に見られないことから、各職場の勤務実態を踏まえ、すべての教職員にとって勤務時間の短縮をさらに実効あるものとするために、勤務時間体制の見直しと改善が必要です。組合員の皆さんの声を基に、勤務時間の短縮を実効あるものとするため、粘り強く運動を進めて行きます。
A4 教職員の評価と処遇への反映について
2006年に大阪府の教職員に人事評価制度が導入され、法人においても府派遣職員をはじめ教員を除く全ての法人職員に「大阪府準拠」の人事評価が行われ、勤勉手当と昇給に評価結果が反映されています。大阪府の人事評価制度はこれまでの府労組連と府職労の闘争の取り組みの中で、多くの問題点が指摘され、いくつかの見直しが成されてきましたが、府派遣職員の法人職員化などにより府派遺職員が大幅に減少する府立大学では、法人独自の職員の「人事評価制度」が必須です。府大教は、組合員の意見を基に、法人独自の人事制度の構築とともに、人事評価制度の見直しを要求して行きます。
教員の業績評価と処遇への反映は、その目的が高等教育機関としての大学の使命と責務に合致し、教員の職務内容を総合的且つ合理的に評価し得る公正で多様な評価であることが求められます。公正で透明性のある評価基準、適正な評価者の選任、評価への異議申し立て権の保障、処遇への反映に当っての査定のあり方の合理性などは、教員の勤務労働条件に直結する課題です。法人との協議・交渉に当っては、組合員の意見を基に、これら全てが組合との交渉事項であることを明確にし、評価項目や評価基準が不透明で未成熟な現状では、評価を導入しない、処遇への反映を行わないことを求めていきます。
B) 教員の課題
大幅な教員削減が計画される中、教員の勤務労働条件の改善にとって2011年度に取り組む重要な課題の1つは、教員の業務の見直しです。中期計画や評価に係る会議や業務、および授業改善としてのFDや JABEE 関連等の業務が増大し、さらに研究費削減の一方で外部資金獲得のために費やされる時間が増えており、教員の「研究時間」の減少が教育研究環境の悪化に拍車をかけてきています。また、補講による週休日の出勤(週休日の振替)も生じるなど、「研究時間」の確保はますます困難になってきています。府立大学が高度研究型大学をめざすうえで、「研究時間」の確保は最も緊要な課題です。さらに補講による週休日の出勤の問題などは、適正な教育条件の確保の問題としても大きな課題を提起しています。
B1 裁量労働制試行導入に伴う教員活動支援策の拡充
2008年度に教員に対する裁量労働制が試行導入されました。導入の前提条件である「1週間の勤務時間(38時間45分)のうち、非裁量業務がおおむね半分を超えない」を充たしているかについて多くの疑義が明らかにされてきています。このような疑義を払拭し、前提条件を充たすための法人が取るべき施策として、十分な教員活動支援策をとることを法人が導入時に労働協約(確認書)として約束しました。しかしながら、一部において改善はされてはいるものの、現行の教員活動支援策は、前提条件を十分に充たすものとはなっていません。特に、「大学改革」に関わる非裁量業務が多くの教員に陰鬱に圧し掛かってきている現状を見るならば、裁量労働制の試行導入の根拠そのものが揺ぎはじめていると看做さざるをえない状況になりつつあります。大幅な教員削減が計画される中、「初年次ゼミナール」をはじめ講義負担も過重になる現状を真摯に認識し、「講義持ちコマの標準化」など教員活動支援策の抜本的な改善を行うことが法人に求められています。
B2 教員の定年の引き上げについて
年金受給年齢の引上げに伴い「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正され、65歳未満に定年を定めている事業主は、その雇用する高齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、①当該定年の引上げ、②継続雇用制度(現に雇用している高齢者が希望するときは、当該高齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)③当該定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければなりません。本学では2007年3月に定年が60歳である職員については、労使協定を締結し再雇用に係る基準を設けています。
教員については、2013年度からの65歳までの定年の引上げを前提として、2011年度からの再雇用制度の暫定的な実施を行うことで合意しました。
府大教は、法の精神に基づく教員及び職員の定年延長を求め、要求及び労使協議の重点課題として、国立大学などの動向もふまえ、法人との団交・協議を行つていきます。
C) 職員の課題
大学職員の急激なプロバー化に伴い、職員の負担は急激に増加してきました。また、図書館では、カウンター業務が委託され、職員の担当する業務も変化しています。新学域でのスタートを来年度に控え、職員の役割もより一層重要度を増してくることが予想されます。事務職員、技術職員ともに専門性の高い業務を日々こなしておりますが、法人は人事計画を早急に示し、地に足がついた、発展する大学組織としていかなければなりません。引き続き大学の教育研究機能を支える母体としての職員組織を目指して、人事計画策定について労使で慎重かつ早急に進めていかなければならないと考えます。
また法人職員の昇格、昇任制度の確立に向けても働きかけていきます。大学を発展、進化させていくことを職員の誇りとして、働きがいのある健康な職場つくりを労使で進めることが必要です。健康で働きがいのある職場を目指して、以下を重点項目として取り組みます。
1) | 法人職員の昇任、昇格制度の確立 |
2) | 平成26年度に向けての給与制度の検討 |
3) | 職員に対しての福利厚生の充実 |
4) | 大学の将来を見据えた職員の育成、専門知識・専門技術の強化、承継についての対策 |
5) | 一部に過重労働を強いることがない人事計画の作成開示 |
6) | 年金受給年齢引き上げに伴う職員の定年延長制度の確立 |
D) りんくうキャンパスの課題
2011年度りんくう執行部は過半数代表者として、りんくうキャンパスで勤務する教職員が、安心して日常の業務や教育研究に専念できるよう、労働条件や職場環境の改善に努めます。また、府大教との連携を強化し、中百舌鳥キャンパスで開催される中央執行委員会や理事長会見、労使協議にもできる限り参加していきます。
厚生活動については、組合員の要望を聞きながら組合員全員が参加できるような企画の検討を行い実施していきます。
E) 羽曳野キャンパスの課題
羽曳野キャンパス部局では、組合員相互の交流を深め意見交換を行つていきます。組合の必要性や府大教での取り組みを積極的に訴え、非常勤職員を含め、組合員を増やしていきます。羽曳野キャンパスで働く教職員が安心して働ける環境をつくっていきたいと思います。
F) 非常勤職員の課題
2010年度の活動で、フルタイム契約職員への勤務時間短縮の導入、年休付与方法の改善、健康診断項目の充実、学外での人間ドック受診等の職免の取扱いなど労働条件の改善が行われました。2011年8月現在、府立大学3キャンパスには182名の専任職員、約650名の非専任職員が勤務しています。専任職員は昨年に比べて29名が減員となっていますが、非専任職員の数は大幅に増加しています。法人は大学改革の過渡期であり府派遺職員の引き上げに伴う暫定的な措置としていますが、多くの非専任職員に支えられて法人運営が行われていることは明らかなことです。そのような中で、専任職員と非専任職員の労働条件に大きな格差があり、非専任職員でも雇用形態は様々で、給与体系にも格差が生じています。
府大教はこれまでの要求アンケートや組合員の要求から2011年度は以下を重点課題として取り組みます。
1. | 雇用年限の撤廃 |
2. | 非専任職員から法人職員への採用枠の確立 |
3. | 勤務年数に応じた昇給制度の確立 |
4. | 特別休暇(特に夏期休)等、有給休暇の拡充 |
5. | 短時間勤務者への時短に見合う労働条件の改善 |
大阪府立大学は、法人化後6年が経過し、第2期中期計画(2011-2016年度)の初年度を迎えました。法人は、橋下知事と大阪府戦略本部会議が2009年9月に提示した「府立大学のあり方」の方針を受け入れ、教職員・学生の声を無視し、各部局の正規の機関による審議やフィードバック抜きの非民主的な大学運営による「改革」をトップダウンで推進してきました。2005年の法人化時に7学部体制でスタートした学部教育は、2012年度からは、人間社会学部、経済学部、理学部の3学部が廃止され、4学域からなる「理系を中心とする大学」に再編されます。新たな中期目標・計画では、法人化時に130億円あった大阪府からの運営費交付金が2016年度までに「90億円に削減」され、国が地方交付金の算定基準とする98億円にも満たなくなり、大阪府は設立団体としての責任すら果たさないことになります。
また、教員を「現行教員配置計画の目標(H24年708名)から10%削減」、職員を「当初現員数(214名)から25%削減」することを掲げており、大学としての活力の衰退とともに、教育研究条件の悪化や、「人減らし」による教職員への労働過重の押し付けなど、勤務労働条件のいっそうの改悪が危惧されます。
さらに、教員の所属を学部・研究科から分離し、新たに教員組織(学群・学系部門)を法人組織として設置しました。教育組織と教員所属組織の分離は、「教育と研究は一体のもの(文科省)」としている大学の教育研究のあり方ともに整合しておらず、トップダウンの人事管理や教員配置の削減には都合が良くても、学生の教育の質を保証することは困難となります。府大教は、最後まで組織移行のための就業規則変更に同意しませんでしたが、法人は2012年度からの学部再編に先駆け、大阪府との約束どおり、組織改変を1年前倒しで強行しました。
府大教は、民主的な大学運営を求め、法人との定期協議、理事折衝、学長会見や部局長会見を通じて、改革の問題点を明らかにし、組合員への情報提供に努めました。しかし、まだ十分とはいえず、府大教には改革のオピニオンリーダーとしての役割を果たすことが求められています。下記の方針の下に、教育体制の問題、教職員定数や教員所属組織の問題など積み残されたままの課題に取り組み、すべての組合員とともに民主的な大学づくりをめざします。
A) 「大学改革」に全学の意見を反映させること
「大学改革案」は、大阪府の圧力に屈した'出速な改革であり、学内で合意されていない事項は、全学的な協議を十分に尽くすべきですとりわけ、「大学改革案」の最大の特徴としている教育組織と教員の所属組織の分離は、教育の責任体制を暖昧にし、大学教育に不可欠な自治的運営に支障をきたすとともに大学の自治の形骸化をもたらすおそれがあります。大学の自治が十分に機能し、教員がその教育責任を全うし得るような民主的かつ合理的な組織体制と教育運営の確保をめざします。
教職員の削減、運営費交付金縮減は大学としての活力の衰退をもたらします。府立大学のさらなる発展のために、教職員定数と運営費交付金を十分に確保することが必要です。また、教職員の削減計画は、雇用問題や動務労働条件に直結するものであり、府大教は、教職員の勤務労働条件、教育研究条件の改悪に反対し、雇用を守ります。
教職員の削減、運営費交付金縮減は大学としての活力の衰退をもたらします。府立大学のさらなる発展のために、教職員定数と運営費交付金を十分に確保することが必要です。また、教職員の削減計画は、雇用問題や動務労働条件に直結するものであり、府大教は、教職員の勤務労働条件、教育研究条件の改悪に反対し、雇用を守ります。
大学改革の問題点について情報交換を行い方針を議論する組織(専門部会)を立ち上げ、共通の認識を広めるとともに組合方針に反映します。
B) 学長選考に対する意向投票制度とリコール制度
府大教は、学長となる理事長の選考に、意向投票の実施等、大学構成員の意思を公平に反映する民主的な仕組みを作ることを要求してきました。しかしながら、過去2回の理事長選考では、理事長選考会議は、十分な審議や学内での意見聴取も経ないまま、「意向投票」を実施せずに理事長の選考を実施しました。
府大教は、新しく選ばれる理事長が全学の構成員の総意としての信頼を得るためには不可欠であり、全国の国立大学法人のほぼ全てで行われている「意向投票」制度を実施しないことに抗議するとともに、自主的な意向投票を実施しました。学長選考について教職員が積極的に関与し、理事長選考制度に大学構成員の意思を反映する民主的な仕組みを作ることをめざします。また、一旦選考された理事長の権限の大きさと責任の重さに鑑み、理事長のリコール制度を内規として設けることは不可欠です。速やかに理事長の解任規程を整備し、解任請求投票制度を制定することを法人に要求します。
C) 教育研究会議の尊重
法人化後の大阪府立大学の組織や運営制度は、これまで重要な役割を果たしてきた評議会、教授会における大学の意思決定プロセスが希薄になり、理事長、役員会による一方的なトップダウンの大学運営となっています。府大教は、大学運営が教育公務員特例法の精神を承継し、学問の自由と大学の自治に則り、構成員の意思が反映できる仕組みを目指します。
法人化後、本来なら審議して決議・承認するべき機関であるはずの教育研究会議は、単なる連絡会となってしまっているようです。この体制を継続することは、組織運営の不具合が生じたときにはすべての責任を役員会に押しつけることができるとしても、大学の自治を捨ててしまうことに他なりません。また、学科会議→教授会→教育研究会議一→役員会という意見集約のボトムアップが機能していないこの現実は、構成員の諦観をますます助長する要因となっています。府大教は、教育研究会議を教育研究に関わる重要事項を実質的に審議する機関として機能させる民主的な大学運営の実現を要求します。
D) 大学憲章の制定を目指して
他大学の多くは大学の目的や理念をいろいろな形で明示しています。それらには、「教育の理念」・「研究の理念」・「大学の社会的使命」の3点に加え、「大学の自治・大学運営の理念」が必ずといつてよいほど明記されています。しかしながら、大阪府議会で決めた法人の定款や設立準備委員会が決めた大学および大学院の学則には「大学運営の理念」が明示されていません。府大教は、学生、教職員をはじめすべての大学構成員が参加する体制の下で、自律的にこの「運営の理念」を宣言する必要があると考えます。「21世紀の大阪府立大学を考える会」は、カリキュラム改革や、学費値上げ、大学予算削減反対署名など、これまでにも大きな成果を上げてきましたが、全ての大学構成員の共同をさらに前進させ、「大学運営の理念」を含めた、押しつけではない我々の「大学憲章」の制定を目指します。
E) 大学の将来像について
本年3月29日に、大阪府知事は次期中期計画の認可を行いました。その原案は、府から大学へと提示されたものであり、大学は若干のコメントを行ったにすぎません。このことに限らず、一連の府大学改革における、現在の府立大学の立場を見れば、将来を危ぶまれると言っても過言ではありません。
大学教育は、教育体系の一方の極にあるものであり、その変更は、大阪府民、ひいては国全体の未来に大きな影響を与えるものです。言わば「国家100年の大計」に相当するものですが、これを任期数年の政治家や府の幹部、あるいは評論家が「改革」と称して、単なる思い付きで変更するようなものではありません。何となれば、その「改革」が最低の結果を出したとしても、その時その責任者達は、その職にいないどころか、この世にいない可能性もあるのです。そのような結果の責任をとらない将来を危惧させる改革を、これ以上許してはいけません。
大学における活動は、構成員である教員、職員、学生が一義的に責任を持ちますが、その社会的な価値は、多くの卒業生、あるいは、これから入学するであろう若者、さらには地域全体で、長い時間をかけて評価するものであると考えます。
府大教は、府大の将来は府大の構成員の知恵と創意を結集して自ら策定すべきであるという立場から、地域と連携しつつ、府と法人による一方的な将来設計提案に対して批判的検討を進めるとともに、将来設計に対する組合員の意見を反映して要求していきます。
A) 教育研究環境整備
来年度からの新体制発足に伴う持ちコマ数の増加、法人化以前から続く各種予算削減、教員定数削減に加え、教職員の一人あたりの業務量は增加の一一途をたどっています。その上、次年度の時間割も、今年度から実施されるという業績評価の具体的な内容も未だ示されないという、まさに混迷を深める中、多くの教職員はあらゆる面で行き詰まり感、疲弊感に苛まれているのではないでしょうか。社会貢献や入試対策等でも報われない作業が増加し、「講義の準備をするための充分な時間が確保できない」、「研究に際してアイデアをじっくり練るための余裕がどんどんなくなってきている」、「学生の話を十分に聞き、適切なアドバイスをする時間が確保できない」といつた声が多くの教職員から聞かれます。
教員に対する講義支援業務は、講義資料や試験問題の印刷、配布、教室の準備、出欠調査、レポート回収など多岐にわたる大学の基幹業務です。他大学では教務支援センター等を設け常駐する職員やTAが、常動、非常勤を問わず講義を受け持つ教員を効率よく支援し負担を軽減している例を見ることが出来ますが、残念ながら本学においては全く未整備です。府大教は教育支援業務のための人員増をねばり強く交渉した結果、部局単位で非常勤職員の増配を獲得したものの、教務支援策は未だ未整備のまま、増配分は他の業務の支援に理没してしまっていると言って良い状態です。府大教はさらに有効な教務支援策を要求するとともに、必要に応じてさらなる人員の增補を求めます。
本学教職員の給与は、度重なる給与引き下げによって減額の一途を辿り、教員の資金的環境は過酷を極めています。基盤研究費の20%カットは継続して断行され、研究に関する資金的状況はさらに惡化しています。外部資金の獲得を前提に「自己の成果によって研究費を賄え」という法人の「自活自戦」の戦略は、学生としっかり向き合い、手厚い教育を実践してきた本学の伝統とは全く相反するものです。さらに法人が拙速に導入、実施を画策している業績評価は、職場や職階によって講義負担についての重みが異なるなど、講義軽視ともとれる思想を露呈しています。こういつた方向性が、本学の教育研究水準の維持向上をどのように実現するのか、全く理解できません。府大教は組合員の教育研究環境の向上策を検討するとともに、法人に対し現状と方向性に対する十分な検証と改善を引き続き求めます。
以前から府大教は教職員の休暇の取得や無理のない事業計画を可能とする、余裕のある学年歴を作成するよう要求してきましたが、法人は、今年度も補請期間、調整期間はほとんど設定されていない、いわば無謀な学年歴を強行しました。この夏は特に省エネが社会的に要請されるにもかかわらず、8月第2週まで試験や補講が実施され、大学としての品位が疑われているといつても過言ではありません。府大教は、引き続き学年歴の見直しをさせるとともに、6限目や土曜日の補講等で生じる教職員の業務負t日増などについて検証し、法人に対してその対策をねばり強く要求していきます。
B) 学内施設等の改善
法人は、学域学類の設置、初年度教育の充実等を含む大学改革を性急に進めようとしていますが、それらを支えるインフラストラクチャーである学内施設の整備は全く取り残されたままです。
安全が確保され、効率的に仕事が行える環境を整えることは、全教職.員にとって最優先の懸案事項であり、今後とも労使協議等を通じて設備改善の要求を続けます。また、建物にかぎらず、施設に関する各職場からの要求を、アンケート等を通じてぜひお知らせください。
一方、「安全衛生委員会」の委員を推薦し、委員との意見交換を通じて、組合員の安全と健康の維持に努めてまいります。また、学内の福利厚生を協議する「福利厚生協議会」に委員を推薦することで、教職員の福利厚生の充実を目指します。
【キャンパスプラン】
法人は06年7月に「中百舌鳥キャンパス及びりんくうキャンパスにおける施設の新築整備や、耐震を含めた抜本的な改修整備の方針」として「大阪府立大学施設整備プラン(改訂版キャンパスプラン)」を策定しましが、その計画は遅々としてすすまず、10年6月見直し方針(案)、8月に転がし計画(案)が出されました。現在進行しているキャンパスプランは新学域、学類の物理的な分断化を招く一方、教職員や学生に耐震化の行われていない老朽校舎での教育研究を強いるものです。ましてやAl、A2棟が廃墟としてキャンパスの中心に残ることは、景観を損ねることにもつながります。
教育研究環境の安全性と高い教育研究効率を総合的に支持するキャンパスプランを進める事を法人に対して求めていきます。
【宅舎問題】
08年10月に法人から示された大阪府立大学大野芝宅舎と単身寮(自適寮)の廃止決定に対し、府大教は福利厚生の空疎化をもたらすものととらえ、立ち退きに反対する宅舎自治会を支援してきました。また、廃止決定の主な理由としてきた「教育・研究環境整備の財源確保」については、大野芝地区の大学への出資がなされないことが明らかとなり、大学へのメリットも消滅しています。
引き続き宅舎自治会と連携して、当該組合員の意見と要求を踏まえ法人に対して以下のような要求を行うとともに、法人と協議していきます。
1) | 廃止の決定にあたって「公立大学法人大阪府立大学教職員宿舎運営協議会」等で適正な協議・手続きが踏まれていないこと、また法人が示した廃止理由は借地借家法の定める正当事由にあたらないことから、廃止決定を撤回すること |
2) | 空き室が増えることによる治安悪化を防止するために、直ちに新規入居者の募集を再開すること |
3) | 今後の教職員等宿舎運営について話し合うために、運営協議会の開催および各自治会と法人との話し合いの場を設定すること |
A) 組織拡大:安定的な過半数組合を目指して組合員拡大5カ年計画
2002年には529名の組合員を組織し、十分に過半数組合の力量を保持していた府大教は、その後の教員定数25%削減計画の実施、府立3大学統合再編、大学法人化の中で、組合員の退職や異動、新規教職員の組合未加入などにより、組合員数が大きく減少しています。08年度の活動方針で「組合員拡大5ヵ年計画」を定め、過半数組合をめざすことを決定しました。
「組合員拡大加入促進規程」を整備し、新規加入組合員の組合費納入の6ヵ月猶予や組合員拡大に協力した組合員への謝礼などの特典を設けるとともに、組合費を引き統き時限的に0.6%(非常勤職員組合員0.3%)とするなど組織拡大に向けて未加入の教職員に加入を働きかけてきました。また、毎年4月には法人主催の新規採用者説明会で組合の説明と加入の訴えを行うとともに、組合独自の新規採用者説明会も開催してきました。10年度は22名の組合員の加入があり、43名が年度末の退職や異動等で脱退し、11年現在、組合員数は417名になっています。組合員の退職や異動などによる減少は第2期中期計画の教職員削減の中で増大することが予想され、府大教は組織的にも財政的にも危機的な状況に直面しています。この危機的な状況を克服するため、府大教は組織拡大を強化し「組合員拡大5ヵ年計画」に引き続き取り組むとともに、過半数組合をめさします。
組合員拡大5ヵ年計画
1) | 2008年から2012年度までの5年間に200人の組合員増(単年度40人増)を成し遂げ、過半数組合をめさします。 |
2) | 「自ら大阪府立大学を守り、動務労働条件の改善のために組合加入を」スローガンに、教育研究環境と勤務労働条件改善の活動と組織拡大を両輪とした運動を進めます。 |
3) | 組合員拡大の具体的な取り組みを進めます。 |
(1) | 組織部を中心に職場代表と協力して組合加入対象者を明確にします。 |
(2) | 組合加入を勧めるパンフレットを作成します。 |
(3) | 職場で組合員と協力して未加入教職員に組合加入を勧める集いを催します。 |
(4) | 非常勤職員への組合加入を積極的に進めます。 |
(5) | 新規加入組合員の組合費納入猶予期間や組合員拡大に協力した組合員への謝礼など特典を周知、活用し組合加入を進めます。 |
B) 府大教の福利厚生活動の充実
各種のサークル・クラブ等の活動を府大教の福利厚生活動の一環として今年度も補助金などの援助をしていきます。また、独自企画や各種の催しの参加費援助など、福利厚生活動のさらなる充実を目指します。10年度から府大教の要求に基づいて、法人規定で教職員の福利厚生の充実を目的とする「福利厚生協議会」が設置され、組合推薦で2名の組合役員が委員となっています。福利厚生協議会では「公立大学法人大阪府立大学福利厚生指針(案)」が作成され、教職員の福利厚生の充実に向けて基本方針が確認され、目標と行動計画が定められました。これまでの府大教独自の取り組みとともに、「福利厚生協議会」での取り組みも重視して、福利厚生活動の充実を目指します。
C) 労働組合としての闘争の戦術研究
労働法の下では勤務労働条件などについては労使の交渉によって決めることとなりますが、高等教育機関である大学の教職員の労働組合が給与闘争などにおいて、ストライキを実施したり裁判闘争等を行うことについては、社会情勢に配慮し、私立大学の教職員組合の経験などを参考にして検討していくことが重要です。闘争研究部では労働法に定められた労働基準監督署への改善勧告申し立てや労働委員会への不当労働行為救済申し立て、裁判闘争の手続きなど、勤務労働条件改善のための対法人交渉について、弁護士との相談も踏まえ、具体的に検討していきます。
D) 大阪府大学教職員ユニオンとの関係
大阪女子大学教職員組合は2008年大阪府大学教職員ユニオンと改称しました。これまで過半数代表者の選出にあたって、大阪府大学教職員ユニオンに推薦人の協力を依頼するなどいくつかの共闘態勢を取ってきました。また、給与改定など就業規則の変更や重要事項については、府大教ニュースを大阪府大学教職員ユニオン組合員を含め全教職員に配布するなど情報提供に努めています。今後も可能な共闘態勢を試み、最終的には互いに組織合流する方向への模索を続けます。
E) 大教組、全大教、公大連など労働組合上部団体との関係
大教組(大阪府教職員組合)は大阪府の教職員の連合組織で、府大教は大教連(大阪地区大学教職員組合連絡協議会)を通じて大教組に加盟し、府労組連(大阪府関連労働組合連合会)に参加しています。大阪府立大学は設立団体である大阪府から運営費交付金を交付されていることから、教育研究環境・動務労働条件の改善については法人化前と同様に、対大阪府との協議交渉が重要です。しかしながら、法人化後は要望書や請願署名などを大阪府に提出しているものの、直接大阪府と協議交渉することができなくなっています。府派遣の組合員を持ち、運営費交付金削減が教育研究環境と勤務労働条件を著しく悪化させている今日、大教組・府労組連と連帯して直接、大阪府と協議交渉する場の獲得をめざします。
府大教は国立大学を主体とする全国組織である「全国大学高専教職員組合(全大教)」および公立大学の組合を全国組織する「全国公立大学教職員組合連合会(公大連)」に加盟しています。府大教は、労働組合としての体制作りや労使交渉への取り組みなどについて、「全大教」を通して全国の大学教職員組合の経験と教訓を共有し、それらを参考にしてきました。全大教の取り組みそのものは、国立大学が主体であり、少数の公立大学の問題はどうしても疎かになりがちではありますが、文科省や総務省との協議・交渉など公立大学として今後とも加盟を続けていくことが必要です。「公大連」は2006年に協議会から連合会に発展改組しました。公大連は労使交渉相手(設置者)がすべて異なる労働組合の連合ですので、公立大学側の協議会(公大協)や総務省、文科省との協議・交渉の接点として重要な役割を果たすことが期待されています。
2011年3月11日に起こった東日本大震災とそれにつづく原子力発電所事故は、未曾有の大惨事として私たちの記憶に刻み込まれる事になるでしょう。原子力発電所の水素爆発と同時に、「環境」「エネルギー」「科学技術の信頼性」「危機管理」等々の問題が一気に噴出し、さまざまな混乱が終息に向かうのかも懸念されています。大学にとっても、これらの重要かつ因難な問題を将来にわたって解決できる人材の育成にとどまらず、科学技術への不信の回復や先端研究の社会へのメディェーションなど、その責務はますます大きくなってきています。大阪府立大学が、次の時代を担う人材を育てる場として、また次の時代を支える研究を推進する場として社会に貢献するためには、全構成員による民主的な運営がなされるべきだと考えています。教職員が自発的意欲のもとに働くことができれば、自ずとユニークな研究・教育が工夫され、学生が大学に残って研究・教育に参加するという好循環がうまれ、すべての構成員が誇りをもてるような大学に変化していくと考えます。よりよい大学、よりよい職場環境を整えるためにも、府大教の活動への積極的なご参加をお願いします。