第4号議案
2014年度活動方針に関する件
今、日本の社会全体の潮流が急速に、しかも大きく変わりつつあります。平和憲法の解釈変更、集団的自衛権の行使容認、秘密保護法、武器輸出3原則の見直しが、国民の意見を顧みずに、短期間のうちに、政府によって強引に進められています。また、教育の改革も性急に進められ、先の国会において、地方教育行政法、学校教育法と国立大学法人法が改正されました。地方教育行政法の改正では教育委員会制度の見直しによる教育長の権限が強化され、「総合教育会議」の新設による首長の教育への関与など、学校教育の統制強化がなされました。学校教育法の改正では教授会を「学長が決定を行うにあたり意見を述べる」諮問的な機関に位置付けてその役割を限定し、学長の決定権が明確化されています。これは、多様な意見を反映されるべき大学の運営にあって大きく逆行すると危惧されるものです。
このような大きな流れの中で大阪府立大学も、その歴史の中でも重大な岐路に立っているということができます。いうまでもなく、ここ数年の間に大阪府立大学は、何度も組織の改編を経験してきました。平成17年の大阪府立三大学の統合、平成24年の学域制への移行、そして現在、大阪市立大学との統合に向けて検討が進められています。特に近年の2回にわたる大学組織の変更は、当時の橋下徹大阪府知事と大阪維新の会による政治的な圧力の下で進められてきています。ここでは、大阪府立大学がどうあるべきか、という本質的な議論を学内において十分に行わずコンセンサスや理解を得ることなく、強引に学域制への移行がなされ、そして、その2年後には、大阪維新の会による大阪都構想の提唱に付随して大阪市立大学との統合の構想が突如として出現し、現在、それが進められつつあります。
そもそも、大学の組織改編後、その結果が出ることも待たずに、たった2年後に次の組織改編の議論を進めることなど、普通ではありえない事態であり、このことは、この大学改革を、十分な考慮なく進めたことを自ら示すものです。そして、府立大学と市立大学の統合についても、学内における十分な議論と合意を積み重ねることなく強引に進められてきています。昨年11月には、法人統合を推進するため「大阪市立大学の定款の一部変更」「中期目標の一部変更」議案が市会に提案されましたが、学内でのコンセンサスが不十分との理由によって否決されたことは当然の帰結と言えます。現在は、府立大学、市立大学において「公立大学のあり方」の議論を進め、その統合に向けての環境を整えている段階ですが、これは、市会での否決理由とされた、学内における議論が不十分との指摘に対するアリバイ作りのようにも受け取れるものですし、そもそも、今の時点になって「公立大学のあり方」を議論するなど本末転倒であるといえます。
このような大阪府立大学の近年の変遷は、政治的な力によってその変化を余儀なくされてきたということができます。また、その動機が大学教育の本質に対する十分な理解と見識に基づくものではなく、他の思惑によって強引に進められるのであれば、大学にとって取り返しのつかないダメージを受ける可能性もあります。
大阪府立大学では、その基本理念として、「大学の構成員すべてが世界水準の研究を目指す高い志を持ちつつ、社会の牽引役となる有為な人材を、高度な研究の場を通して教育し、輩出する大学」と掲げられています。このような豊かな知性と深い見識をもつ有為な若者を育てるためには、大学組織が多様な個性を受け入れることのできる大きな包容力を持つことが必要であることは言うまでもありません。それは、大学という大きな容器の中で多様な個性が、相互作用しながら融合しあうことで大きな力が生まれるからです。しかし、今、大阪府立大学は、その大学組織の変革の大きな流れの中で、大学の研究教育を直接担っている教職員の考えを十分に取り入れながら実りのある改革を進めようとする姿勢を示しているといえるでしょうか?最近、大学で配布された「Nano Square Newsletter Vol. 12, August 1」のなかで辻洋理事(教育研究担当)は、「一般に改革には大きな抵抗があるため、遂行する当初には、従来とは違う方向にトップダウンで強く力を働かせる必要がある。」と述べています。多様な議論の中では当然反対意見も出ますし、それらの意見も取り込み、反映させる中で互いの理解が深まり最善の道が拓かれていくものでしょう。方針とは異なる多様な意見を「大きな抵抗」と位置付け、「強い力を働かせ」トップダウンで強行すると述べる言葉からは、教職員の議論を十分にくみ取って大学改革に反映させようという姿勢を感じることはできません。
大学改革においては、より良い大学システムを構築することが本質であることは言うまでもありません。大学改革において「スピード」がことさら強調され、それがさも最重要事項であるかのように捉えられるのであれば、大学改革は良い方向に進まず、将来大きな禍根を残すことにもなり得ます。
今、我が国の大学組織において、学長の権限を強め、学長トップダウンによる大学改革を進める土壌作りが進められています。しかし、近年の府立大学における大学改革が政治的な力で駆動されている現実を見れば、大学改革におけるトップダウンの「トップ」とは必ずしも学長を意味するものでないことを認識する必要があります。冒頭で述べた我が国における最近の政策動向と教育統制強化、そして、大学組織において進むトップダウンという名の上意下達システムの定着化は、教育体系における大学の存在意義を変質化させるだけでなく、我が国の将来の方向に大きく影響を与える可能性もあることを考える必要があります。
大阪府立大学の将来を大きく左右する岐路に立つ今、私たちに求められることは、大学執行部から与えられる方針を唯々諾々と受け入れ、それに従うことではなく、私たち自身が大学の将来について真剣に考え、そして、その意見を積極的に発信して、それを大学運営に反映させていくことです。府大教は、組合員の意見を取り込み、反映させながら、教職員の暮らしを守り、勤務労働条件と教育研究環境の改善を目指して、2014年の活動方針について、大会議案として以下に提案します。
重点課題と具体的取り組み
A) 給与、労働条件の改善について
私たち教職員の勤務労働条件は、労働基準法第1条で「労働条件は、労働者は人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と定められた労働条件の原則に則り、第2条の「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」に拠って決定されます。また、労働契約法は第9条で「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定め、一方的な勤務労働条件の不利益変更を禁止するとともに、第10条で「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」と勤務労働条件の不利益変更についての厳しい制限を定めています。労働者の保護を図る法の理念は、使用者が、賃金についての不利益変更を行う場合には、「代償措置その他関連する他の労働条件の改善」の措置を取ることを当然の前提としています。
給与については、地方独立行政法人法(地独法)第57条の3は、「法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならない。」と規定しています。すなわち給与の支給の基準は、「法人の財務状況と業務実績」および「社会一般情勢」であると明示し、大阪府が条例で府公務員に対して定める基準を、法人が画一的に法人教職員に適用することを強く戒めています。しかしながら、同様に労働法制の下におかれている独立行政法人である国立大学においては、東日本大震災の復興財源とするという名ばかりの理由で、人事院勧告に拠らず特例法で7.8%も給与切り下げが行われた国家公務員に準じた給与切り下げが進められ、全大教と加盟10単組がそれぞれに不当労働行為による労働委員会への提訴と賃金不払いの裁判闘争を提起しています。府大教は国立大学の教職員組合の闘いと全大教の取り組みに連帯して支援するとともに、裁判闘争の経験と教訓を共有し、大学法人の財政状況、とりわけ運営費交付金の人件費と教職員の給与のあり方がどのように裁判で判断されるかに注視していきます。法人はこれまで給与改定に際して、法人の運営費交付金が大阪府によって措置されていることを理由に「大阪府準拠」を提案し、主要な国、公、私立大学に比べ、私たち教職員の給与は著しく低くなっています。2013年度には人事委員会勧告に沿って給与水準の改善はあったものの、特例減額は低率になったとは言え、継続されています。大学の教職員としての尊厳を回復し、働き甲斐のある職場を目指し、府立大学を発展させるためにも、給与の改善は重要な課題であり、国、公、私立大学の教職員の給与水準について賃金闘争部を中心に調査を進め、法人独自の給与制度の構築に向けて取り組みを強化します。
労働法で保障された労使交渉に全組合員の団結で粘り強く取り組み、不利益変更を許さず、賃金切り下げ反対の取り組みをいっそう強化して、大学の崇高な社会的使命に相応しい「法人独自制度」を作らせる闘いを進めましょう。
A1 業務に見合った特殊勤務手当等の導入
これまでの府大教の取り組みの中で、法定職をはじめいくつかの手当が特殊勤務手当として制度化され充実されてきました。一方、社会貢献手当は表彰規程に基づく報奨金として支給されています。実際に汗をかいている教職員の業務に見合った特殊勤務手当の導入は、勤務労働条件の改善向上、組合員の権利拡大に向けて重要な課題です。残念ながら他大学においては、入試手当など従来手当化されていたものが「本来業務である」という理由で廃止されている例も見受けられます。特殊勤務手当等の新設、導入、維持改善については、今後も他の国公立大学の状況を調査し、教職員の業務の実態に合わせて更なる充実に向けて取り組みを強化していきます。
A2 裁判・労働委員会闘争の研究
府大教は労働組合として法人登記し、「法人格」を取得することにより、府大教が裁判所や労働委員会に提訴するための条件を整備してきました。また、労働審判法は使用者と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを、そのトラブルの実情に即し迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とする労働審判手続を定め、通常の裁判訴訟に比べて手続も容易で、短期間で紛争解決を図る手段として組合員が個人として訴訟する有効な手段です。府大教は、北大、阪大において不当労働行為救済申し立てが地方労働委員会で認められたこと、京大を中心に取り組まれている給与不払いに関する裁判闘争、多くの私立大学の裁判闘争の勝利からの教訓に学び、これからも裁判・労働委員会闘争について研究、検討を進めていきます。
A3 勤務時間の短縮について
教職員の勤務時間の短縮を要求してきた府大教の運動の成果として、2010年4月より専任職員への勤務時間の短縮が導入され、2011年4月からは非専任職員(フルタイム契約職員)にも勤務時間の短縮が実施されました。2つの勤務体制(A勤9時~17時30分、B勤9時15分~17時45分)により実施されている勤務時間制は多くの職場で定着してきているものの、短縮の成果が十分に見られないことやサービス残業の実態も見られることから、各職場の勤務実態を踏まえ、すべての教職員にとって勤務時間の短縮をさらに実効あるものとするために、勤務時間体制の見直しと改善が必要です。組合員の皆さんの声を基に、勤務時間の短縮を実効あるものとするため、粘り強く運動を進めて行きます。
A4 学年歴の見直しと年休取得促進について
近年、講義回数の15回厳格化、祝祭日の新設等によって学年歴は大きく変貌し、前期は8月に入っても講義が続き、後期では公聴会の日程確保もままならないという状況が定着してきました。また、講義や期末試験の日程の合間に入試関連や社会貢献の各種業務が差し込まれ、教職員は週末でさえ無理な出勤を強いられています。このような無理な学年歴は教職員の年休取得を阻み、健康被害も懸念されます。現在、打開策の一つとして祝日となる月曜日の開講を打診されていますが、祝日を勤務日とすることの影響は大きく、特に育児や介護を抱える教職員にとっては容易に受け入れられるものではありません。勤務日の変更による不利益が発生しないよう、十分に注視し慎重に交渉を進めます。合わせて、教職員の年休取得をはじめとする休養日の充実に向け、取り組みを強化していきます。
A5 教職員の人事評価制度について
2006年に大阪府の教職員に人事評価制度が導入され、法人においても府派遣職員をはじめ教員を除く全ての法人職員に「大阪府準拠」の人事評価が行われ、勤勉手当と昇給に評価結果が反映されています。大阪府の人事評価制度はこれまでの府労組連と府職労の闘争の取り組みの中で、多くの問題点が指摘され、いくつか見直しされてきましたが、府派遣職員の法人職員化などにより府派遣職員が大幅に減少している府立大学では、法人独自の職員の「人事評価制度」が必須です。また、府人事委員会は「人事評価は、評価を通して、職員の資質の向上及び公務能率の向上を図ることが目的であり、人事評価制度の運用にあたり、最大限の効果を発揮するための努力を継続されるよう望む」として、すでに破たんしている評価制度を追認する不当なものになっています。民間研究機関の調査でも「企業内の年齢内格差が大きい企業ほど、社員の健康状態が悪いことが確認され、成果主義導入による弊害が生じている」ことが明らかになっています。府大教は、組合員の意見を基に、法人独自の人事制度の構築とともに、人事評価制度の見直しを要求して行きます。
教員の業績評価と処遇への反映は、その目的が高等教育機関としての大学の使命と責務に合致し、教員の職務内容を総合的且つ合理的に評価し得る公正で多様な評価であることが求められます。府大教は、2012年度から試行実施された教員業績評価の結果の検証を強く法人に求めるとともに、教員業績評価が公正で公平な評価となるよう評価の方法と基準を見直すとともに、不公平な評価制度に基づく処遇への反映を行わないことを強く求めていきます。
B) 教員の課題
教員削減が人事委員会制度の下で実行される中、教員の勤務労働条件の改善のために2013 年度に取り組む重要な課題は、 教員の業務の過重に対する見直しです。 授業負担の増加とともに教育研究組織と教員所属組織の分離による指揮命令の混乱の中で、 大学改革や評価に係る会議、 入試業務、 授業の持ちコマ等が増大し、 さらに研究費削減の一方で外部資金獲得のために費やされる時間が増えており、 教員の 「研究時間」 の減少が教育研究環境の悪化に拍車をかけています。 また、 オープンキャパスや補講、 更には社会貢献による週休日の出勤(週休日の振替) も生じるなど、 「研究時間」 の確保はますます困難になっています。 府立大学が高度研究型大学をめざすうえで、「研究時間」の確保は最も緊要な課題です。専門業務型裁量労働制の適用をはじめ、適正な教育研究環境の確保の問題として、教員の勤務状況を調査し、その実態を明らかにするとともに、問題点を整理し、課題を提起していきます。
B1 裁量労働制試行導入に伴う教員活動支援策の拡充
2008年度から教員に対する裁量労働制が試行導入され、「1週間の勤務時間(38時間45分)のうち、 非裁量業務がおおむね半分を超えない」 裁量労働制の基準を充たしているかについて多くの疑義が明らかにされてきています。 このような疑義を払拭し、 法人が取るべき施策として、十分な教員活動支援策をとることを労働協約(確認書)で確認してきました。 しかしながら、 現行の教員活動支援策は、 十分に教育研究環境を確保するものとはなっていません。 特に、 非裁量業務が多くの教員に陰鬱に圧し掛かってきている現状を見るならば、 裁量労働制の試行導入の根拠そのものが揺ぎはじめているとみなさざるをえない状況になりつつあります。大幅な教員削減が行われる中、講義負担も過重になるとともに、教員の実労働時間が増加している現状を真摯に認識し、 労働時間管理のあり方や 「講義持ちコマの標準化」など具体の教員活動支援策の改善が求められています。 府大教はこれらに対する取り組みの強化を図ります。
C) 職員の課題
組合活動の原点は、組合員の身近な問題に取り組み「働きがい」のある職場作りです。教員職においては65歳定年制が導入されました。同じ事業所で働き、同じ法人で働く法人職員についても65歳定年制を導入する様、強く法人に申し入れます。
「働くことが楽しい、働いていて良かった」と職員みんなが思えるようになる労働環境・労働条件の職場こそが、大学が持つ使命を果たしていけると考えられます。
より良い労働環境・労働条件を目指し、以下を重点項目として取り組みます。
- 年金受給年齢引き上げに伴って、法人職員の定年を65歳に引き上げ
- 法人独自の法人職員の昇任・昇格制度の確立
- 職員に対しての福利厚生の充実
- 大学の将来を見据えた職員の育成、専門知識・専門技術の強化のための研修等の保障、およびその知識・技術継承のための対策
- 業務量に応じた適正な職員の配置(時間外勤務の縮減、各職場の業務量の均一化)
- より良い労働環境になるよう職場環境の改善
D) りんくうキャンパス
2013年度りんくう執行部は事業場過半数代表として、 りんくうキャンパスで勤務する教職員が、安心して日常の業務や教育研究に専念できるよう、労働条件や処遇の改善に努めます。また、 りんくう事業場安全衛生委員会とも協力して職場環境の改善に努めます。 基本的には府大教の執行方針に従うことはもちろんのこと、 中央執行部との連携を強化し、 中百舌鳥キャンパスで開催される中央執行委員会や労使協議にも、 遠隔中継を利用して、 できる限り参加していきます。 りんく う独自の労働環境である獣医臨床センター(病院)についても、 労働条件の改善のために、 勤務実態の把握に努め、 組合を通じて要求するべきことがないか注視していく所存です。
福利厚生活動については、 組合員の要望を聞きながら組合員全員が参加できるような企画を検討し実施していきます。 活発な同好会活動も継続していきます。
E) 羽曳野キャンパス
羽曳野キャンパス部局では、 組合員相互の交流を深め意見交換を行っていきます。 組合の必要性や府大教での取り組みを積極的に訴え、 非常勤職員を含め、 組合員を増やしていきます。 羽曳野キャンパスで働く教職員が安心して働ける環境をつくっていきたいと思います。なかでも、 昨年度からの継続協議となっている空調問題については、 教育研究環境を改善させるうえでも重要なことです。 引き続き集中空調の運転時間の延長と必要な部屋への個別空調の設置の実現に向けて取り組んでいきます。
F) 非常勤職員の課題
府大教は、法人化後、非常勤職員の組織化を行うとともに労働条件の改善に取り組んできました。1年ごとの労働契約で雇用されている非常勤職員の雇用の延長(3年限度→特段の事情のある場合は5年)、給与改善(2014.4から平均2.56%UP)、フルタイム勤務者への時間短縮、健康診断項目の拡大など、少しずつではありますが改善してきました。
2014年8月現在、府立大学3キャンパスには165名の常勤職員、約750名の非常勤職員が勤務しています。どの職場も非常勤職員なくしては運営が厳しい状況となっていますが、このことは、法人も認めています。5年の経験を積み、大学業務に精通された非常勤職員が3月で雇い止めとなり4月に新たな人材を雇用することは、当事者同士の引き継ぎも行われず、常勤職員へ負担を強いることとなり、大学にとっても大きなマイナスといえます。
これまで、非常勤職員の中から社会人採用等で職員となった方、労働契約法の改正に伴い無期雇用化となった方などがいますが、現状では、わずかの職員の方に過ぎません。また、改正労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)に照らして非常勤職員の労働条件が常勤職員に比べて不当に切り下げられていないかを検証していきます。更には、他大学の状況なども調査し、府大教は非常勤職員の無期雇用化の実現と労働条件の改善を求めていきます。
2013年10月、大阪府、大阪市、大阪府立大学、大阪市立大学の四者により、「新大学案(平成25年10月版)」が策定され、統合が急速に進められようとしていました。しかし、11月の大阪市会において大阪市立大学の定款変更と中期目標変更の議案が否決され、大阪府は府議会への上程を見送り、事実上、統合の議論は頓挫しました。このような中、2014年4月25日の大阪府戦略本部会議は「統合に係るスケジュールの延期と両大学で主体的に大阪における公立大学のあり方を検討する」ことを決定し、府立大学では副学長が中心となり、9月には「公立大学のあり方」の大枠を策定しようとしています。このようなやり方は、これまでと同様に大学内部議論軽視およびトップダウン方式による組織改革が不毛に繰り返される危険性を秘めています。
公立大学は、高等教育機関として、また地域住民の教育文化の拠点として、多面的な役割を担っています。一時の流行に流された行政主導の改革は、大学の真の発展を阻害するものです。教育基本法第7条第2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と規定しており、組織改革には、大学の自主性を尊重し、公開された大学内での十分な民主的議論を経ることが不可欠です。大学を単に大阪府・市に役立つ機関とするだけではなく、高等教育機関としての役割を十分に果たし、高度の教育研究や文化を持続発展させることのできる、府民・市民のための大学改革を目指すことが必要です。
府大教は、民主的な大学運営を求め、法人との定期協議、理事折衝、学長会見や部局長会見を通じて、改革の問題点を明らかにし、組合員への情報提供に努めてきました。しかし、まだ学内議論は十分とはいえず、府大教には改革のオピニオンリーダーとしての役割を果たすことが求められています。下記の方針の下に、大学統合問題、教育体制、教職員定数や教員所属組織の問題などの課題に取組み、すべての教職員とともに民主的な大学づくりを目指します。
A)「大学改革」に全学教職員の意見を反映させること
2012年4月から新学域体制がスタートし、新旧カリキュラムの並走、基礎教育の全学化、教員の削減等により、人員確保の困難や教員の負担増が顕在化し、2011年度から導入した教員所属組織も全く機能しないなど、問題が山積しています。とりわけ、教育組織と教員の所属組織の分離は、教育の責任体制を曖昧にし、大学教育に不可欠な自治的運営に支障をきたすとともに大学の自治の形骸化をもたらすおそれがあります。
教職員の削減、運営費交付金縮減は大学としての活力の衰退をもたらします。府立大学のさらなる発展のために、教職員定数と運営費交付金を十分に確保することが必要です。また、教職員の削減計画は、雇用問題や勤務労働条件に直結するものであり、府大教は、教職員の勤務労働条件、教育研究条件の改悪に反対し、雇用を守ります。
府大教は、今後の大学統合の動きに注視し、行政主導による改革ではなく、民主的な大学運営の実現のために、学生を含めた全構成員の声を反映した大学運営の実現を求め、大学改革の問題点について情報交換を行い、共通の認識を広めるとともに組合方針に反映します。
B) 理事長・学長の民主的な選考制度の確立
奥野理事長の任期が2015年3月で満了となります。次期理事長を選考するための理事長選考会議が2014年8月4日に開催されました。理事長(学長)は理事長選考会議の選考により大阪府知事に申し出し、任命されることになります。府大教は、学長となる理事長の選考に、意向投票の実施等、大学構成員の意思を公平に反映する民主的な仕組みを作ることを要求してきました。奥野理事長は意向投票について検討すると発言したものの、その制度を変えることはありませんでした。法人化によって理事長に権限が集中したことは、大学の民主的な運営にとって大きな問題となっています。そもそも、これまでの理事長選考会議は、十分な審議や学内での意見聴取も経ないまま、理事長の選考を行ってきました。とりわけ、今年度は、新たに理事長が選考される極めて重要な時期でもあります。
府大教は、新しく選ばれる理事長・学長が全学の構成員の総意としての信頼を得るためには「意向投票」制度が不可欠であり、これからも理事長・学長選考について教職員が積極的に関与し、選考制度に大学構成員の意思を反映する民主的な仕組みを作ることをめざします。また理事長・学長の権限の大きさと責任の重さに鑑み、リコール制度を内規として設けることは不可欠です。速やかに理事長・学長の解任規程を整備し、解任請求投票制度を制定することを法人に要求します。
C) 教育研究会議の尊重
法人化後、それまで大学の組織運営に重要な役割を果たしてきた評議会、教授会の意向が軽視され、理事長、役員会による一方的なトップダウンの大学運営となっています。府大教は、大学運営が教育公務員特例法の精神を承継し、学問の自由と大学の自治に則り、構成員の意思が反映できる仕組みを目指します。
法人化後、評議会の機能を引き継いでいるはずの教育研究会議は、単なる連絡会となっていると言われています。このような状態では、大学が自治されているとは言えません。また、意見集約のボトムアップが機能していない状態は、構成員の諦めと絶望感をますます助長しています。府大教は、教育研究会議を教育研究に関わる重要事項を実質的に審議する機関として機能させる民主的な大学運営の実現を要求します。
D) 大学憲章の制定を目指して
他大学の多くは大学の目的や理念をいろいろな形で明示しています。それらには、「教育の理念」・「研究の理念」・「大学の社会的使命」の3点に加え、「大学の自治・大学運営の理念」が必ずといってよいほど明記されています。しかしながら、本学では「大学運営の理念」が明示されていません。法人に「大阪府立大学憲章準備委員会」が設置されていますが、近年、委員会は開催されていません。府大教は、すべての大学構成員が参加する体制の下で、自律的にこの「運営の理念」を宣言する必要があると考えます。全ての大学構成員の共同をさらに前進させ、「大学運営の理念」を含めた、押しつけではない我々の「大学憲章」の制定を目指します。
学域・学類体制は3年目を迎え、中期計画に沿った人員削減は引き続き断行され、各職場での人員の不足はより深刻度を増してきています。研究教育の場においても退職教員の補充すら困難な状況が続き、教職員削減の影響は様々な弊害を引き起こし始めています。
教職員数の削減問題
図1および図2に法人化(H17)前のH16年度を1とした国立大学、公立における教職員数の変化の時系列を示す。[1]H25年度では本学の教員数は0.68,職員数が0.83となっている。データはすべての国立・公立大学の総教職員数である。国公立大学の情報は文部科学省の統計データから引用した[2,3]。図1、図2から府大の正規職員数(▲)が急激に減少していることがわかる。教員数(●)も減少している。国立大学における教員数(○)はほぼ横ばい、職員数(△)はおよそ1.3倍に増加している。公立大学における教員数、職員数は1.2倍に増加している。わずか10年の間に府大の教職員数が激減し、国公立大学との格差が急激に広がっていることが分かる。
教員一人あたりの学生数は、激増
教員一人あたりの学生数に関する推移を、図3に示す。府大(●)はH26年度に教員1人あたりに対する学生数が11人を超える。これは公立大学の平均値(○)とほぼ同水準である。国立大学の平均値(△)は10人未満である。ただし、公立大学の平均値(○)がH17年度からほぼ横ばいであるのに対し、府大は年度とともに増加している。H15から17年度には国立大学より教員一人あたりの学生数が少なかったことを考えると、この10年の間に教育環境が激変してきたことが伺える。それでも、府大の受験生応援サイトには、少人数教育であることを売りにするような文言があり、嘆かわしいかぎりである[4]。
運営交付金、削減の一途
運営費交付金について、図4にまとめた。府大と国立大学全体の交付金について、H16年度を基準として年次推移を示した。府大のH25年度の交付金額がわずかながら増加したが、国立大学への交付金額と比較すると一段と低い水準であることが分かる。平成26年度についてはいっそう削減される計画となっている。
コアジャーナルの費用、激減
コアジャーナルの大幅な見直しが迫られた。昨年からの円安の影響で海外出版社との契約金額が大幅に値上がりしたことが主な原因である。図8に、主要な国公立大学の図書関連費用をH14年度分からプロットした[6-10]。府大(■)が他の主要国公立大学に比べて図書費用が例年低いことが分かる。加えて、年々図書関連費用を減額していることも分かる。神戸大学(●)および北海道大学(△)では過去より増額されていることが分かる。他の大学は減額であることが分かる。減額の流れのなか、府大(■)は際だって大幅な減額であることが分かる。
■具体的な取り組み
2005年度からの三大学統合と法人化、2012年度からの学域制発足さらには府市統合に絡む大学統合など大阪府立大学を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。なかでも、第二期中期計画(2011年度~2016年度)に掲げられている教職員の大幅削減や運営費交付金の削減は、大学で働く教職員の勤務労働条件を大きく低下させる深刻な問題です。
府大教は、大阪府立大学の教職員がこれまで公立大学として担ってきた役割を守り、社会の期待に応えながらさらなる発展を遂げるために、以下について要求します。
A) 教育研究環境の改善
基盤研究費の20%減額は3年目となり理系教員40万円、文系実験系32万円、文系20万円という状況が常態化してきました。削減分は部局長裁量経費に振り替えられていますが、その使途については疑問が残ります。同規模の他大学と比較しても基盤研究費は決して十分ではありません。安定的な教育や研究活動が保障されるように、基盤研究費・教育費の充実を求めます。また、裁量労働制試行導入の大前提となっている教員活動の支援の充実については予算の増額と有効な教務支援策を要求し、教育研究時間の確保に努めます。
部局からの申し出による新規採用人事がほぼ凍結されているという、大学の自殺行為に等しい現在の教員人事採用計画を、引き続き是正することを要求します。
若手教員が、「身分不安定な任期制の職では家庭も持てない…」と考えてしまうのは当然のことと思えます。若手教員の人材確保のためには、違法すれすれの全学一律の任期制助教制度を廃止すると共に、任期制助教の任期を外すこと、若手教員のキャリアパスについても考慮すべきです。
B) 学内施設等の改善
法人はトップダウンで部局制から学域学類への移行を断行し3年目を迎えましたが、教育環境の未整備は改善されていません。新学域の学舎につては計画も示されず、耐震化の為、最優先であるべきキャンパスプランの進捗は遅れたままです。またずさんな移転計画の中、キャンパスプランには示されていない付け焼き刃のような改修工事が散見されています。さらに突然持ち上がった府市統合のあおりで、見通しはさらに不透明になっています。震災の影響による工事単価の上昇から予算的な逼迫は更に深刻となっています。本学の看板であった中百舌鳥門正面の工学部学舎は解体が進むなか、その後の計画は示されないままです。とはいえ、教職員自己研修室の整備、「国際交流施設」の着工など、より良いキャンパスづくりへの取り組みも僅かながら進んでいます。引き続き府大教は、教職員の働きやすさに加え、安全で機能的なキャンパスの実現に向け、法人に対し粘り強く働きかけていきます。
特に予見されている大震災を見据えると、安全の確保は全教職員にとって最優先の懸案事項です。今後とも労使協議等を通じて設備改善の要求を続けるとともに、建物、施設等に関する各職場の組合員からの声を汲み上げ、改善に努めていきます。また、「安全衛生委員会」の委員を推薦し、委員との意見交換を通じて、組合員の安全と健康の維持に努めるとともに、学内の福利厚生を協議する「福利厚生協議会」に委員を推薦することで、教職員の福利厚生のさらなる充実を目指します。
【キャンパスプラン】
法人は06年7月に「中百舌鳥キャンパス及びりんくうキャンパスにおける施設の新築整備や、耐震を含めた抜本的な改修整備の方針」として「大阪府立大学 施設整備プラン(改訂版キャンパスプラン)」を策定しましが、その実施は遅れに遅れ、数度の微小変更はあったものの、ほぼそのままに現在も転がし方式の移転が進められています。この間「学域学類制への移行」や新学域の設置、さらには大阪市大との統合による組織改編も議論されるなか、年度ごとに大阪府の予算措置により実施計画に変更が加えられる一方で「大学改革」による組織の改編については考慮されず、新学域、学類の物理的な分断化を招く結果になるとともに、移転を待つ教職員や学生には耐震化の行われていない老朽校舎での教育研究を強いるものです。A2棟、A9棟の解体については進展がありましたが、今日に於いても新大学に対応していない旧のキャンパスプランが延々と進められていることについては、将来に禍根を残す重大な問題と考えます。
教職員の意見を反映し、教育研究環境の向上を見据えた、安全で優れた教育研究を実現するためのキャンパスプランを立案し、進める事を法人に対して求めていきます。
情報ソース:
- 府大の運営費交付金および教員ひとり当たりの学生数(データで見る大阪府立大学 2014)
- 国公立大学の教員数のデータ:e-Stat 政府統計の総合窓口>学校基本調査>年次統計
- 国公立大学の学生数のデータ:文部科学省トップ > 公表資料 > 統計情報 > 文部科学統計要覧・文部統計要覧 > 文部科学統計要覧(平成26年版)
- 大阪府立大学> HOME > の中の受験生応援サイト > の中の大阪府立大学はこんなところ!
- 文部科学省の統計データ(政府統計の総合窓口 学術情報基盤実態調査平成14年度から25年度)
- 大阪府立大学 学術情報センターが発表している年報「情報」(2006年から2013年)
2014年度,2015年度分は図書委員会資料(教員配布資料)
- 東京大学の値は東京大学附属図書館統計表(平成14年度から25年度)
- 大阪府立大学術情報総合センターの事業年報(平成20年度から23年度)
- 九州大学の値は九州大学附属図書館 図書館年報(2005から2013年度)
- 北海道大学の値は北海道大学附属図書館(図書館年次統計平成20から25年度)
A)組織拡大:安定的な過半数組合を目指す組合員拡大の取り組み
2002年には529名の組合員を組織し、十分に過半数組合としての組織力を保持していた府大教は、その後の教員定数25%削減計画の実施、府立3大学統合再編、大学法人化の中で、組合員の退職や異動、新規教職員の組合未加入などにより、組合員数が減少し、14年3月現在、組合員数は356名になっています。これまで過半数組合を目指して「組合員拡大5カ年計画」に取り組み、毎年4月には法人主催の新規採用者説明会で組合の説明と加入の訴えを行うとともに、組合独自の新規採用者説明会も開催してきました。しかしながら第2期中期計画の教職員削減の中で、組合員の退職や異動などによる組合員数の減少が大きくなっており、府大教は組織的にも財政的にも危機的な状況に直面しています。府大教は大学統合問題をはじめ、教職員の勤務労働条件の不利益な変更を許さないとともに、教育研究環境のより一層の改善に向けて、この危機的な組織状況を克服するために、組合員拡大の以下の取り組みを強化していきます。
組合員拡充のための施策
- 「自ら大阪府立大学を守り、勤務労働条件の改善のために組合加入を」スローガンに、教育研究環境と勤務労働条件改善の活動と組織拡大を両輪とした運動を進めます。
- 組合員拡大の具体的な取り組みを進めます。
- 組織部を中心に職場代表と協力して組合加入対象者を明確にします
- 組合加入を勧めるパンフレットを作成します
- 職場で組合員と協力して未加入教職員に組合加入を勧める集いを催します
- 非常勤職員への組合加入を積極的に進めます
- 府大教の福利厚生活動への参加を組合加入対象者に呼び掛けるとともに、組織強化・救援基金特別会計を活用して、組合員拡大の企画を行ないます
B) 府大教の組織変更
府大教の組織変更については、2012年度からの学域制移行に伴い旧学部が2016年度にはなくなる状況を踏まえ、旧学部を単位とする府大教の職場代表等の選出単位については名称
も含めて見直すこととし、2015年度大会に提案することとします。
C)府大教の福利厚生活動の充実
各種のサークル・クラブ等の活動を府大教の福利厚生活動の一環として今年度も補助金などの援助をしていきます。また、独自企画や各種の催しの参加費援助など、福利厚生活動のさらなる充実を目指します。10年度から府大教の要求に基づいて、法人規程で教職員の福利厚生の充実を目的とする「福利厚生協議会」が設置され、組合推薦で2名の組合員が委員となっています。福利厚生協議会では「公立大学法人大阪府立大学福利厚生指針(案)」が議論され、年度ごとに作成されています。教職員の福利厚生の充実に向けて、福利厚生の基本方針が審議され、目標と行動計画が定められます。これに伴い、「教職員自己研修室」の充実と「教職員食堂(仮称)」の設置の検討が進められています。これまでの府大教独自の取り組みとともに、「福利厚生協議会」での取り組みも重視して、福利厚生活動の充実を目指します。
D)労働組合としての闘争の戦術研究
公立大学法人の教職員の勤務労働条件は、労働法制に基づいて、労使の交渉によって決しなければなりません。しかしながら、府大教は、高等教育機関である大学の教職員の労働組合であり、労働者の権利に基づく労使の交渉であっても、例えば、ストライキの実施や裁判闘争等を行う場合、高等教育機関である大学の特性に鑑み、社会情勢への配慮とともに国立大学法人及び私立大学の状況の検討などが必要です。すなわち、府大教にとって、闘争の戦術研究は重要な課題です。闘争研究部では、労働法に定められた労働基準監督署への改善勧告申し立てや労働委員会への不当労働行為救済申し立て、裁判闘争の手続きなど、勤務労働条件改善のための対法人交渉の方法、戦術ついて、弁護士との相談も踏まえ、具体的に検討していきます。
E)大阪府大学教職員ユニオンとの関係
大阪女子大学教職員組合は、2008年大阪府大学教職員ユニオンと改称しました。これまで過半数代表者の選出にあたって、大阪府大学教職員ユニオンに推薦人の協力を依頼するなど、いくつかの共闘態勢を取ってきました。とくに、給与改定など就業規則の変更や重要事項については、府大教ニュースを、大阪府大学教職員ユニオン組合員を含む全教職員に配布するなど情報提供に努めています。また、大阪府大学教職員ユニオン役員との定期的な懇談会(2か月に1回)を開催し、交流・意見交換を図ってきました。その中で、将来の組織統合に向けて、協議することに合意するとともに、法人に対して「意見書」を両組合連名で提出するなど重要な課題について共闘することができました。今後は、中央執行委員会での審議・決定を経て、さらに共闘関係を進めていくとともに、組織統合に向けての協議を進めていきます。
F)大教組、全大教、公大連など労働組合上部団体との関係
大教組(大阪府教職員組合)は大阪府の教職員の連合組織で、府大教は大教連(大阪地区大学教職員組合連絡協議会)を通じて大教組に参加し、大教組が主要な組合の1つである府労組連(大阪府関連労働組合連合会)の一員として府労組連の運動に参加しています。大阪府立大学は設立団体である大阪府から運営費交付金を交付されていることから、教育研究環境・勤務労働条件の改善については法人化前と同様に、対大阪府との協議交渉が重要です。しかしながら、法人化後は要望書や請願署名などを大阪府に提出しているものの、直接大阪府と協議交渉することができなくなっています。府派遣職員の組合員を持ち、運営費交付金削減が教育研究環境と勤務労働条件を著しく悪化させている今日、大教組・府労組連と連帯して直接、大阪府と協議交渉する場の獲得をめざします。
府大教は国立大学を主体とする全国組織である「全国大学高専教職員組合(全大教)」および公立大学の組合を組織する「全国公立大学教職員組合連合会(公大連)」に加盟しています。全大教には首都大学東京をはじめ公立大学の10の教職員組合が加入していますが、その運動は、国立大学が主体であり、公立大学の問題はどうしても疎かになりがちとなり、全大教の公立大学協議会は永らく開催されておらず、公立大学交流会議が交流と議論の場となっています。しかし、全大教を通じて今後とも文科省や総務省との協議・交渉などを進めて行くためには、全大教の公立大学の交流と議論を深めていくことが必要です。引き続き全大教に対して公立大学協議会の再建を求めていきます。「公大連」は公立大学の35の教職員組合が加入する組織で2006年に協議会から連合会に発展改組しました。公大連は公立大学の協議会(公大協)や総務省、文科省との協議・交渉の接点として重要な役割を果たすことが期待されます。
大阪府と大阪市が主導し、大阪府市新大学構想会議が具体的案を考え、大学がそれに追随するというやり方での大阪府立大学と大阪市立大学の統合のプロセスは、大阪市議会によって実質的にNOを突きつけられました。当初のスケジュールでの統合はこれで頓挫したわけですが、政治主導で始まった統合劇が、再び政治の力によってストップしたことに虚しさを感じないわけにはいきません。
統合が頓挫したことに対して大学内で責任をとる人物も居ず、そもそも大学に責任があるという発想さえ執行部にあるのかどうか疑わしい―この状況が象徴的に示すように、この間の統合プロセスに大阪府立大学が主体的にかかわったとは到底言えません。現在、「両大学で、主体的に大阪における公立大学のあり方について検討」(府戦略本部会議資料)することが求められています。今こそ学内の議論を活性化させ、主体的な検討を行う時です。
しかし、近年の大学運営では、強引な「トップダウン方式」が幅を利かせ、大阪府立大学を構成する教員、職員、学生が意見を出す十分な機会が作られていません。その結果、大学構成員の中から湧き上がるボトムアップのエネルギーを生かすことが全くなされていないのが現状です。大阪府立大学において、真に「主体的に」検討を行うためには、まず第一にこれまでのやり方を改めることが必要です。
府大教は、職場委員を通じて、また、アンケートなどの手段で、すべての組合員の声を聞き、それらの声を運動の強固な基盤にしたいと考えています。ボトムアップの力を結集して、法人と鋭く対決することが、大学を真に守ることであり、また教育研究という大学の使命を果たすための最低限の民主主義的条件を確保することになると確信しています。日本の社会全体も大きく変わりつつあります。平和憲法の解釈変更、集団的自衛権の行使容認、秘密保護法、武器輸出3原則の見直しが、国民の世論を顧みずに、政府によって強引に進められています。最低限の民主主義的条件を確保することが、国民世論を無視した政府の動きへ反撃する国民的力の一助になることを期待します。
組合活動へのいっそうの積極的な参加を呼びかけます。